"ジプシーの涙"

ほこりまみれの街角で、イザベルはディエゴを待っていた。

彼女の足元には何本ものタバコの吸い殻が落ちている。

教会の鐘の音を何度聞いたことだろう。

結局夜になっても彼は現れなかった。

不安と焦りでいてもたっても居られなくなったイザベルは、

ディエゴを捜して街を彷徨い歩いた。

ようやくディエゴを見つけた場所は、イザベルがよく踊りを披露していた酒場だった。

ここで二人は出逢ったのだ。

思い出の場所でイザベルは耳を疑いたくなる様な言葉を聞いた。

「俺がジプシーなんかに本気になるわけないだろ。」

「あの女、街のはずれでお前を待ってたぜ。」

と男達は笑っていた。

あまりの事に唖然とし、よろめいた瞬間、イザベルは側にあったグラスを倒してしまった。

その音に振りむいたディエゴと目が合うと

「嘘だろ…」

とイザベルはつぶやいた。

酒場を一瞬の沈黙が支配した。

「一緒に街を出ようって言ったじゃないか!」

とイザベルはディエゴに向かって叫んだ。

「おい女、ディエゴは街一番の闘牛士だぞ。お前みたいな女を相手にするかよ。さっさと帰りな!」

と、とりまきに言われてイザベルは、咄嗟に酒瓶を投げつけた。

泣きわめくイザベルを男達は店の外に放り出し、ディエゴはその様子を笑って見ていた。

外は雨が降り出し、道はぬかるんでいた。

水たまりにつっぷしたイザベルは、惨めで悔しくて泣いた。

震える体を抱きよせた時、ふと、首飾りが壊れている事に気がついた。

それは今朝、旅立つイザベルに親友のモニカとテレサが友情の証として贈ったものだった。

二人の顔が浮かんだ瞬間、イザベルはジプシーの小屋へ帰ろうと思った。

 

疲れ果てたイザベルが小屋の扉を叩くと、眠い目をこすりながらモニカが出て来た。

モニカの美しい顔を見ると、イザベルは泣き崩れ、その場に倒れ込んでしまった。

その様子を見て事情を察したモニカは

「あの男、駆け落ちする気なんてなかったのさ。」

と腹を立てて言った。

物音を聞きつけたテレサが、のそのそと部屋の奥から現れた。

「とにかく中に入って。今暖かいスープを作るから。」

と肉付きの良い身体を揺らして言った。

イザベルの濡れた服を着替えさせていると、

モニカは今朝贈った首飾りが壊れている事に気付いた。

「鎖が切れて、ペンダントに引っ掛かっちまった…

あたいドジだろ。たった一日でこんなにしちまってさ。」

とイザベルが言うと、

「そんな事ないさ。面白い首飾りになったじゃないか。なぁ、テレサ。」

とモニカが言った。

するとテレサは、

「あっはは、壊れたもの同士が支え合って落ちない。

こりゃあ、おかしいや!まるで私達のようじゃないか。

…いいなぁ、イザベルが羨ましい。あたしも一生に一度だけでも大恋愛がしてみたいよ。

でも、きっと無理ね。こんなに太ってちゃ。」

と笑いながら大鍋いっぱいのスープを持って来た。

それを見たイザベルは

「そんなに飲めないよ。」

と笑った。

泣き疲れ、笑い疲れた三人は明け方近く眠りについた…

 

翌朝目覚めたモニカは、テレサと共に、ディエゴを懲らしめてやろうと決意する。

眠りこけているイザベルの髪を優しく撫で、絡まった首飾りを見つめてモニカは言った。

「本当にこの子は、手がかかるんだから」

するとテレサも言った。

「まったく…でもイザベルがどんなにダメでもあたし達はこの子の味方さ。そうだろ、モニカ?」

「そうさ、いつだってね!」

そう言って二人は街へ出かけて行った。

 

モニカはその美貌で闘牛士の仲間を誘惑、

その隙にテレサは牛たちに、興奮作用がある薬草を食べさせた。

さらに二人はジプシーの仲間達に声をかけ、闘牛場に石を持ってくるように言った。

モニカとテレサは、目覚めたイザベルを闘牛場へ連れて行った。

ディエゴは悠然と対戦場に現れた。

しかし放たれた闘牛の相手を出来たのはほんの数分、

激しく興奮する牛を制御出来なくなったディエゴは場外へと逃げ出した。

そのあまりに無様な姿を見て、観客は石を投げつけて笑った。

モニカはイザベルに

「あの男に言いたい事言ってやるんだよ!」

と言った。

イザベルは大きく息を吸いこむと、思い切り叫んだ。

「あんたは最低の男さ!馬鹿野郎!」

悔しい想いをぶちまけると、イザベルの心はふっと軽くなった。

そしてはっとした。

「もしかしてこれはあんた達が?」

とイザベルが言うと、モニカとテレサはうなずいた。

「あんたは一人じゃないんだよ。」

「あたし達が揃えば最強さ。」

そう言って三人は顔を見合わせ、大声で笑った。

 

楽しい時も、悲しい時も、傍にいて絶対味方になってくれる愛しい存在。

「あたいは、いっつも、二人に支えられて生きて来た。あたいの宝は友達さ!」

イザベルの胸には友情の証の首飾りが光っていた。

 

「この首飾り、三人お揃いにしよう!」

「そりゃあいい。」

三人は笑った。

 

 

                                               おわり

 

 

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